外国人
サハリンに来る外国人は、北の地方都市の住民の目から見て、頻繁に来る順としては(1)石油会社のスタッフ、(2)観光客、(3)研究者、(4)マスコミ、となるだろう。(1)の石油会社は現地にとっては巨大な雇用をもたらすわけではない。技術者は外から来るし、インフラ整備もほとんど自前かユジノサハリンスク経由である。ただ、開発と引き換えにある程度の援助がもたらされる。道路や教会の整備、文化事業への協賛など。ロシア人の中にはキリスト教に回帰するものも多いから、これらは大事なことかもしれない。少数民族の文化イベントなどはほぼ完全に石油会社がスポンサーとなっている。(2)の観光客は年々増えていて、こちらは現地のガイドや土産物販売という直接的な経済効果がある。日本人は夏にしか来ないが期待は大きい。受け入れ態勢はあまり整っていないが。(3)の研究者はたいてい一人だし、ごく限られた人間関係の中に閉じこもっている。現地の人間にとっては、研究協力はいい小遣い稼ぎになったりもする。(4)のマスコミはありがたいことに滅多に来ない。だからたまに来れば大歓迎されるだろう。
研究者
サハリンを訪れる外国人のなかで、研究者は少し変わっている。サハリンの人々にも石油会社の人間や観光客は理解しやすい。自分たちも旅行したり、出張したりするのだから。マスコミのあり方はロシアと日本では多少異なるが、まあよく似ている。しかし研究者には、必ずしもなじみがない。学校の教師や動物学者なら身の回りにいる。だが、言語学者や文化人類学者はあまりいない。どんな人間で、何を考えているのか。サハリンの人々はじっと観察している。彼らに対して、研究者がどのような印象を与えるのか。それは研究者自身にかかっている。
義理
サハリンの人々は義理堅い。ニヴフ人も一見ドライだが内実は全く逆だ。非常に義理堅い人々である。彼らは異文化に対して比較的寛容である。ロシア文化、カレーツィ文化、日本文化、中国文化、それらがどれだけ異質であろうと、それだけで怒ったりはしない。だが、外国から来た客人が干し魚やアザラシ肉を食べられなかったり、ロシア人がイクラだけ取ってサケを捨てたりするとちょっと気を悪くする。お互いの文化を尊重する必要はある。彼らは外部から来た人間の心根を推し量っている。