参考写真 その4

「ピラミッドのような家」編

(村上春樹『1Q84』には引用されていません)

「夏小屋と冬小屋とがあるが、前者は柱で組み立てられており、後者は土小舎を思わせるようなもので、格子壁があり、四角形で、ちょうどピラミッドを截ったような形をしている。」

(チェーホフ『サハリン島』p231より)

『1Q84』には引用されていませんが、チェーホフは「ギリヤーク」の伝統家屋を褒めている箇所で、上記のように「夏用住居」と「冬用住居」にふれています。ニヴフ人の住居は現在ではすべてロシア式のものです。ニヴフ伝統式家屋は現在では残っておらず、記憶や資料写真を頼りに復元した模型が資料館などで見られるだけです。

 

 

上の写真で左にあるのが「冬小屋」、右にあるのが「夏小屋」です。夏小屋はこのように高床式のものも、そうでないものもありました。「冬小屋」は、チェーホフが「ピラミッドを截ったような形」と形容したいわゆる「半地下式住居」です。ニヴフ語ではトラフ「陸の家」と呼ばれます。浜小屋より山側に建てられ、昔は冬の間そこで暮らしました。1950年頃までで姿を消し、現在のロシア領内には一基も現存していません。世界で唯一、ニヴフ人が建設した伝統式冬用住居は、なんと網走にあります。

 

 

上の写真が網走の「モヨロ貝塚館」にある、世界で唯一現存するニヴフの「冬用住居」です。戦後すぐに建てられたものなので、もう草が生えちゃってますね。出入り口部分はコンクリートで改修されています。本当はもう少し大きくて長かったはずです。

 

 

内部はこんな感じです。中央にあるのは囲炉裏です。床は土間ですが、数十センチの高さの広いベンチのような高床がしつらえてあり、基本的にはその上で過ごします。私の聞いた限りでは、北サハリンではもっと大型のものが建造されていたようです。

 

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