「自分の〜」
「彼は家に行った」という意味のニヴフ語では、自分の家に行った場合は「自分の」家に行ったといわなくてはなりません。「自分の」は p'i- ピ〜、あるいは p'- プ〜(子音だけ)といいます。
例1 | jaη | p'-raf-toX | vi-d |
ヤン | プ・ラフ・トホ | ヴィ・ド | |
彼が | 自分の・家・に | 行っ・た |
このとき、p'-「自分の」をつけないと
例2 | ×jaη | taf-toX | vi-d |
ヤン | タフ・トホ | ヴィ・ド | |
訳1 | 彼が | (一般的な)家・に | 行っ・た |
訳2 | ×彼の(?) | 家・に | 行っ・た |
訳1のように、他の場所(海や山、学校など)ではなくどこでもいいけれど家に行った、という意味になります。なお、jaη を「彼の」と解釈するのは無理で、訳2のような意味の取れない文になってしまいます。
また、p'-「自分の」ではなく ja-「彼の」とすると、
例3 | jaη | ja-raf-toX | vi-d |
ヤン | ヤ・ラフ・トホ | ヴィ・ド | |
彼が | 別な人の・家・に | 行っ・た |
という意味になります。
これはjaη ヤン「彼」だけでなく、n'i ニ「私」、c'i チ「お前」、c'in チン「お前たち、あなた、あなたがた」などの人称代名詞、人名でも同じです。
例4 | n'i | p'-raf-toX | vi-d |
ニ | プ・ラフ・トホ | ヴィ・ド | |
私が | 自分の・家・に | 行っ・た |
例5 | ×n'i | n'-raf-toX | vi-d |
ニ | ニ・ラフ・トホ | ヴィ・ド | |
私が | 私の・家・に | 行っ・た |
上記例5のように言ってもおそらく通じますが、いい文章ではありません。ニヴフ人はそのような言い方をしないようです。