その他

トンコリの音楽の印象

曲」として知られているものはいくつかあるが、バリエーションが多い。また運指などは比較的自由だったらしい。全体としてかなり自由で個人差が大きかった。5音を破綻なく組み合わせる、というのが究極の原理である。メロディーを聞かせるというより、リズムに乗せる曲が多く、単純なモチーフの繰り返しが基本である。そもそも原理上「速弾き」も複雑なメロディー演奏も無理である。演奏にあわせて子どもを踊らせたり、自分で踊ったりする、という演奏状況からして、「しんみり聞かせる」ものではない。

トンコリとシャマン

 基本的にはトンコリはシャマンと無関係である。西海岸の演奏者自身がシャマンであったこと、トンコリの各部名称が「人体」になぞらえられていること、トンコリを「丁寧に扱わなくてはならない」ことなどから、研究者の一部が勝手にそう推測しただけである。まず、東海岸の演奏者はシャマンではなかった。トンコリ以外の道具も人体名称が適用される、などからシャマンとの関連説は怪しい。

 丁寧に扱うことは事実であり、他の道具より人体に似ていることも事実である。しかしシャマンの道具ははっきりとそう明示されるし、一般人が用いることはない。「腰帯」と同じくたまたまシャマンが使っていたために、特殊な関係があると誤解された例である。

 この根拠のない推測はおそらく、日本民俗学や、さらには当時の他の地域における人類学・民族学などの影響ではなかろうか。かつては音楽と宗教を起源的に結びつけようとする一般的な傾向があった。もちろんアイヌ文化においても、音楽と宗教は無関係ではない。しかしトンコリが他の音楽的文化要素に比べて、宗教的な現象の中でも特にシャマンと関連づけられる根拠はまったくない。

おわりに

 以上、本文では個人名などはわざと伏せておいた。大雑把な流れをつかむためには不要だからである。現在一般に目に触れるトンコリ(とその演奏)はこれらのどこかに位置づけられる。具体的な情報が必要な方は各種文献などを参考にしてください。(2007年10月6日)

終り

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